フリーランスの法人化のメリットデメリット
2021年3月17日 掲載
フリーランスで売り上げが伸びた際に選択肢として挙がるのが法人化です。
法人化にはメリットとデメリットの双方があります。
売り上げによっては法人化で損をする場合もあります。
法人化のメリットとデメリットを、法人化するのに適したタイミングを含めて説明します
フリーランスエンジニアの法人化に伴うメリット①
フリーランスエンジニアが法人化するメリットを紹介します。
本項目で紹介するメリットか良いと感じる場合、法人化を検討してみても良いかもしれません。
フリーランスエンジニアが法人化すると節税が可能
一番のメリットはやはり節税ができることでしょう。
法人化すると所得税ではなく、法人税を支払うことになります。
利益が多くなると、所得税よりも法人税の方が安くなる可能性があるのです。
また、法人化することで消費税の支払いをしなくて良くなる可能性があります。
消費税の支払いは、2年前の売上が1,000万円に達しない場合は免除されるのが普通です。
そのため、会社設立後2年間は原則免除となります。
個人と法人は別々であるため、個人事業者が課税対象になるタイミングで法人化すれば、設立1年目は消費税を支払う必要がなくなります。
こういった節税のテクニックがあるほかにも、退職金が経費として認められるようになります。
個人事業主でも、スタッフに支払う給料やボーナスは経費にできますが、退職金だけは不可能です。
また、役員報酬や株式会社の株主として、配当を受け取ることもできます。
子供などを役員にして、扶養内ギリギリの報酬を設定することで、効果的に税金を節約することができます。
このように税金面で様々なメリットがあるため、節税目的で法人化する人が最も多いです。
フリーランスエンジニアが法人化する際の注意点
フリーランスエンジニアが法人化する際の注意点を紹介します。
フリーランスが支払う所得税は累進課税制なのに対して、法人が支払う法人税は比例税率制です。
累進課税制とは、所得額に応じて多く税金を取る制度のことです。
一方の比例税率制とは、所得額に関わらず会社の規模などによって一定の税率が定められる制度のことです。
そのため、法人化したからといって、必ずしも節税になるとは限りません。
比例税率制になることを考慮し、税額を計算する必要があります。
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法人化する年収の目安
それでは「年収がいくらなら法人化ししても良いのか」について解説します。
法人化すべきかどうかは「税金面で有利か」どうかが一番大きな基準です。
あくまで目安ですが、年収が600~800万円以上なら、法人税の方が安くなり、税金面で有利になりやすいでしょう。
ただ、人によって税金額は変わってくるため、税理士に相談するのがおすすめです。
フリーランスエンジニアの法人化に伴うメリット②
フリーランスエンジニアが法人化する、税金面以外のメリットを紹介します。
これらのメリットも魅力的です、しっかり活かすために覚えておきましょう。
損益に対して負う責任が有限責任
法人化すると、損益に対して負う責任が無限責任から有限責任に変わります。
無限責任とは、簡単に言うと全部個人が責任を取ることです。
有限責任とは、一定の定められた範囲内で責任を取ることです。
具体例を紹介しましょう。
たとえば事業が上手くいかなくなり、自己破産が起きた場合、無限責任だと借入金は個人に帰属します。
そのため個人事業主は、個人の財産を処分してでも支払いをしなくてはいけません。
一方で有限責任の場合、責任の範囲が限定されるため、破産時に個人の財産を処分する必要はありません。
法人の資産を処分して支払うだけで良くなります。
つまり法人化した方がリスクを抑えられるということです。
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フリーランスエンジニアが法人化すると、社会的な信頼、信用を得やすい
フリーランスエンジニアが法人化すると、社会的に信頼を得やすくなるメリットもあります。
法人化することで、事業に責任があると見做される上に、個人ではなく組織として見てもらえます。
「法人化した」と家族に報告すると、喜ばれることも多いようですね。
また、取引先からも一目置かれるようになり、取引がスムーズになることもあります。
それに伴い優秀な人と繋がりやすくなり、人脈が広がったり採用活動に良い影響を及ぼすこともあるでしょう。
更に、社会的信用度が上がると、住宅ローンを組みやすいメリットもあります。
このように、社会的な信頼、信用を得やすくなるのは、隠れたメリットと言えるでしょう。
フリーランスエンジニアが法人化することで、福利厚生の充実が図れる
従業員を雇っている場合、法人化することで福利厚生の充実化が図れます。
法人化すると、健康保険や労災保険、雇用保険、厚生年金などの社会保険へ加入が必須になります。
社会保険は一般的な企業なら当たり前にあるものです。
優秀な人材を確保したいなら、設けなくてはいけない福利厚生の1つでしょう。
また、社会保険へ加入することで、社会的信用の担保にも繋がります。
従業員が増え売上もある程度あるなら、社員満足度を上げるためにも法人化する方がメリットがあるでしょう。
フリーランスエンジニアの法人化に伴うデメリット(リスク)
ここからはフリーランスエンジニアが法人化するデメリットを紹介します。
デメリットというよりも、どういったリスクがあり、何に気をつけるべきかを解説していけたらと思います。
法人化に伴う節税の失敗
節税のつもりで法人化したのに、実際は節税できていない、という場合はあります。
たとえば、従業員に支払う給与などを勘定に入れると、赤字になってしまう可能性があります。
法人から個人事業に戻すことも可能ですが、手続きが煩雑な上に、税理士への依頼料金が無駄になるので、法人化前に本当に節税できるか確認しましょう。
法人化すると、福利厚生費が増える
法人化すると福利厚生費が増えます。
社会保険への加入は必須ですので、その分の支出は考慮しておかなくてはいけません。
福利厚生を設けることは社員満足度を上げるという点では良いことですが、従業員が増えるほど金額が増えるので、気をつける必要があります。
なお、法人化したのにも関わらず、社会保険に加入しないのは違反です。
未加入が発覚すると、法人化時点まで遡って全額支払う必要があるので注意しましょう。
決算書の作成に際して税理士が必要となる
法人の確定申告は個人のものに比べはるかに難しいです。
素人には複雑すぎるため、決算書の作成など税金回りの税理士に依頼するのが普通です。
ただ、税理士に依頼する場合、当然その分費用がかかります。
決算料と顧問税理士の月々の賃金が発生するので、この分の費用も勘定に入れましょう。
法人住民税を支払う必要がある
法人住民税とは法人が支払うべき住民税のことです。
各都道府県は、その地域で暮らしている住民、および法人から税金を取っています。
法人住民税は、会社が赤字だろうと支払う必要があるものです。
そのため、会社設立したばかりの頃は、法人住民税は結構な負担となるでしょう。
フリーランスエンジニアの法人化に伴うデメリット②
フリーランスエンジニアの法人化に伴う、税金面以外のデメリットを紹介します。
これらのデメリットも侮れないので、法人化前に必ず確認を取りましょう。
法人化する際、会社設立の様々な手続きがある
会社設立場合、多くの煩雑な手続きが必要です。
たとえば会社の印鑑を用意したり、所在地選定をしたりなどです。
また、法人設立届出書など、複数の書類を提出しなくてはいけません。
この辺りの作業は人によってはかなり面倒に感じる場合もあります。
専門家に依頼することも可能ですが、税理士に依頼するとき同様高い金額がかかります。
法人化する際には資本金が必要
法人化する場合に必要になってくるのが資本金です。
一応会社設立は資本金1円からでもできます。
ただ、資本金が少ないと企業として社会的信頼が得られず、法人化する旨みが減ってしまいます。
取引機会の増加のためにも、ある程度の資本金は必要でしょう。
十分な資本金を用意するには、金融機関やベンチャーキャピタルから融資を受ける必要もあります。
融資を受ける場合、資料作成などにも時間を費やさなくてはいけません。
フリーランスエンジニアが法人化するなら、そのタイミングは?
法人化するメリット・デメリットを知り、いつ法人化すべきか分からない人もいるでしょう。
そこで、法人化するタイミングの目安となるものを1つ紹介します。
あくまで1つの目安であり、このタイミングが絶対という訳ではないので、注意してください。
フリーランスエンジニアが法人化するなら、インボイス制度の2年前?
インボイス制度とは、売り手が買い手に対して適応税率や、消費税額を正確に通達するため制度のことです。
詳しい説明は省きますが、この制度により、消費税免税事業者と取引する場合、支払うべき消費税額が増える可能性があります。
そのため、消費税免税対象者(売上が1,000万以下)と取引するのを、クライアントが避けるのではないかと言われています。
フリーランスが仕事が減るのを避けるためには、課税事業者になっておく必要があると言えます。
インボイス制が始まるのは、2023年10月です。
そのため、2021年10月までに法人化するのが、望ましいとされる向きもあります。
会社設立後2年間は消費税を納める必要がないため、課税事業者になったときに少し得ができます。
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注意点
上記で「年収が600~800万円以上」なら、法人化した方が有利な可能性があると述べましたが、これもあくまで目安に過ぎません。
本当に有利か確かめるには、ちゃんとシミュレーションを行う必要があります。
また、インボイス制により不利益を被るかどうかに関しても、不確定です。
状況を冷静に俯瞰し、専門家の意見も参考にした上で法人化するかどうかは考えるべきでしょう。
まとめ
本記事ではフリーランスの法人化について解説しました。
本記事で解説したことを以下の3つにまとめました。
・法人化は節税、社会的な信用の面で優位に働きやすい。
・ただし、業績によっては金銭上不利益に働くこともある。
・専門家等の意見も参考にしつつ、慎重に判断すべき。
法人化する場合、メリット・デメリットを考慮した上で考えることが基本です。
特に節税面で有利になるかどうかはよく確認しましょう。
本記事が、法人化を検討するフリーランスエンジニアの方にとって、有意義なものとなれば幸いです。